インフレと繰上げ返済
戦後の右肩上がりの経済成長を経験した世代の平均的な住宅ローン完済期間は、20年前後といわれています。イメージとしては子供が成人する頃までには住宅ローンが終わっている感じです。皆さんの周りにもそういう方がいるのではないでしょうか?
当時も現在と同様に多くの方が基本的には35年で借りていましたから、結構な金額を繰り上げ返済しないと、なかなかこのように期間は短縮されません。
現代の現役世代の多くが、やはり住宅ローンは20年居ないで返すのが当たり前という幻想を持っています。
しかし、戦後の経済成長を経験した世代が非常に短期に住宅ローンの返済が終了した背景には、マクロ経済的な論理的根拠があったのです。そうそれが「良いインフレ」です。
ちょっとややこしくなりますが、カラクリを簡単に説明します。
キーワードは「インフレ」
キーワードは「インフレ」です。
団塊の世代は、戦後のモノ不足を経験しています。
モノ不足に強いのが「インフレ」です。
インフレに強いのは、「モノを所有すること」や「借金をすることです」。
そう、住宅ローンはまさにインフレ時には有効な金融商品なのです。
戦後のバブル期までの高度経済成長は、物価の上昇と所得の上昇をもたらしました。
ですから団塊の世代の多くは、借金の額は変わらないのに、所得がどんどん伸びた為、どんどん繰り上げ返済が可能となったわけです。決して生活費や教育費を削ったわけではなく、所得が純粋に上昇したのです。繰上げ返済を行う「余裕」があったのです。
無理な繰上げ返済はする必要ない
ひるがえって現代はどうでしょうか?
デフレは脱却したようですが、決してインフレではありません。景気の後退と物価の上昇が同時に起こる「スタグフレーション」とも言える様相です。
無論、万人の所得が増加するという状況ではありません。リストラ、転職、増税などにより中には所得が下がる方もいます。むしろ「悪いインフレ」ともいえます。そんな中では、繰り上げ返済はとても無理なはずです。
正確にいうと、生活水準を下げないと繰上げ返済はできない状況です。ですから、無理な繰り上げ返済はする必要ないのです。
繰上げ返済は余裕資金でするべき行動であることをよく認識してください。
必要なのは、安定した収入があるうち(一般的には定年退職60歳、65歳まで)に住宅ローンが返し終わるプランを事前に作っておくことです。
現在はインフレでもデフレでもない状況である為、借金の価値の将来の上下の見込みが立たちません。やはり、今の水準で返済可能なプランを作成することをオススメしたいです。
サンプル1(団塊の世代)
昭和40年当時の平均的な住宅価格は500万円前後でした(今でいえば3,000万円くらいです)
500万円の住宅ローンを期間35年、金利4%で借りた場合の毎月返済額は22,138円です。
昭和40年のサラリーマンの平均月収は68,419円ですので、返済負担率(月収対比)は32.4%になります。
これが15年後の昭和55年には平均月収が約5倍の350,822円になっていますので返済負担率(対月収)は6.3%と激減しました。
このように月収が増加し、毎月返済額が変わらなければ繰上げ返済は誰でも簡単に、生活水準を変えずに実施できるのです。
サンプル2(現代)
現代の平均的な住宅価格は3,000万円前後です。
3,000万円の住宅ローンを期間35年、金利4%で借りた場合の毎月返済額は132,823円です。
平成19年のサラリーマンの平均月収が421,149円ですので、返済負担率(対月収)は31.5%と、昭和40年当時と比べても同じ程度の水準です。
では過去のように、今から15年後の平成34年の平均月収は5倍になっているでしょうか?
多分、5倍にはならないですよね。むしろ今は低金利なので、金利が上がれば毎月返済額が上がるかもしれません。
毎月の返済額が変わらないのに、所得が上がれば返済は楽になります。繰上げ返済はインフレの結果であり、高度経済成長という時代がもたらした産物でなのです。
比較図
団塊の世代
現代






